やさしい色
柊ちゃんにと、おばさんたちの厚意で(売れ残りの)ホールケーキを持ち帰り、1人で食べるのはあまりに寂しすぎて、考えただけで泣けてくる。
聖なる日に生まれたことこそがなによりの幸運だと思え、と言われているような気がして、
柊はとことんクリスマスに彩られ、縛られて、逃れようのない宿命のようなこの名前を、未だに好きになることが出来ずにいる。
(ああ最悪、考えはじめたら本当に涙が)
寒さのせいだと自分に言い聞かせて天を仰ぐ。
「柊ーやっほー。だいじょうぶ? 差し入れ持ってきたよー」
「柊ちゃーん」
どきりとして、声がした方にこわごわ首を捻る。
そこには……今日という日だけはどうしても見たくなかった2人がいた。
親しみを込めて振られる2本の手と、そのあいだ、繋がれた1つの手―――……
光に縁取られたような2人にはあまりにお似合いの、彼らのためにこそ今日があるというくらいに華やかで、かつ目映(まばゆ)い景色に、冗談抜きで目の奥がじわっと熱を持った。
心臓を貫かれたような衝撃に、にわか目の前がまっ暗になって、足元がぐらついた。
挫けそうな膝を叱咤して踏ん張り、下腹部に力を入れてどうにか笑ってみせる。
「ミナ。それに和眞(かずま)くんも」
「これね、肉まん。寒いだろうと思ってこれにしたんだけど、食べる時間とかあるかな」
「あー……いいにおい。だけどうん……今はちょっと無理かも。お客さんが途切れたらそのときもらうね」
袋の中から立ち上る蒸気を堪能する。
それを眺めていた和眞が、おもむろに何かを差し出した。
袋の口をリボンでくくっただけのシンプルな包装で、大きさは両手の平に乗るほど。
問いかけるように柊は小首を傾げた。