やさしい色
「これ、俺たちから柊ちゃんへ、クリスマスプレゼント」
「気に入ってくれるとうれしいな」
「えーっ、ほんと!? ありがとう!」
ことさらにはしゃいだ声を上げて、柊は差し出された物を受け取った。
訊ねる前に「開けてみて」と促され、あたかも夢中みたいにリボンをほどいた。
中からは、レースがあしらわれたリボンのかわいらしいこと、淡いベージュの手袋が出てきた。
見覚えのあるデザインに、柊ははっとミナを見る。
「これって、もしかして……」
ミナはへへと鼻の下をこすった。
「そうだよ。こないだ柊と遊んでたとき、柊がかわいいって絶賛してた手袋。
ブティックのショーウィンドウに飾られてたでしょ。まだあってよかったー」
少しも惜しんでいない様子のミナと、友を喜ばせられて満足な彼女を微笑ましそうに見つめる彼氏とを見比べて柊はふるえる手で手袋に視線を戻す。
「これ、だって……すごく高かった、でしょ……」
はじめて見たとき購入を断念した理由がそう……―――
一介の学生が易々と、手袋に、出せる金額じゃなかったから。
それなのに。
欠片も悔いた様子のない友の穏やかな眼差しに胸が詰まった。
「こんなめでたい日にお金の話なんかなしなし。柊が喜んでくれたらわたしは満足なんだから」
「だけど、それにしたって高すぎるって……」
なおも恐縮する柊に、いいからいいから、と気前よくミナは手を振る。
「わたしも昨日、柊にプレゼントもらってるじゃん。お返しだと思って受け取って」
「だったらお言葉に甘えるけど……和眞くんにはなにもクリスマス、用意してないよ」
「ああ、俺のことは気にしないで。この寒い中がんばってる人へのささやかなご褒美ってことで。それに―――」
と、和眞は照れ臭そうに鼻先をいじりながら、傍らのミナにつと視線を落とす。
「彼女の友だちに優しくすんのは、トーゼンじゃん。
これからも俺たちをよろしくって意味も込めて」
「なにそのセコイ下心!」
彼氏を小突くミナに合わせてあははと笑おうとして、突然おもうように笑えなくなって、焦った。
とっさに口角を上げることで誤魔化すと、手袋を胸に押し当て、もういちど2人に深く頭を下げた。
肩を寄せ合って歩いていく2人を見送る。
……うれしいような切ないような、どっちつかずな複雑な気持ちを持て余したまま、柊は接客を勤しんだ。