やさしい色

 ショートケーキ3つ、チョコ4つを残して、閉店まで30分を切った。

 寒さが身に応えて、立っているのがつらい。

 耳も痛いし、鼻は緩むし、手袋は二の腕までの長さがありながら不思議と冷気が忍び込み、首元のもこもこを口元まで引っぱり上げる。

 サンタのくせに、鼻の色はトナカイに負けていない。

 もう呼び込みの声を出す気力も尽きかけて、強くなってきた雪にじんわりと涙がにじむ、

 ―――そんなときだった。


「一番大きいサイズのケーキ、まだ残ってる? 24センチ、かな」

「あっ、はい、いらっしゃいませ! 24センチだと、もうチョコレートしか残ってないんですけどいいですか―――って!


 入栄くん!?」


 目を剥く柊に、彼は手を上げて、「よ、サンタさん」と白い歯を見せた。


「……ケーキ、買うの?」

「うん。
 何を思ったか、急にいい歳こいた大人たちがケーキケーキ言い始めてよー、買ってこいって命じられたの。
 これ、全部上にサンタの砂糖菓子のってる?」

「うん。……あんまり美味しくないけど」


 声をひそめて言うと、入栄くんは笑って、「期待はしてない」と小声で返した。

 とにかく、クリスマス用、というのがはっきりしていることが重要らしい。

 年甲斐もないこだわりが可笑しいような微笑ましいような、会計を済ませながら柊はくすくす肩を揺らす。

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