やさしい色
(ば、爆弾発言)
瞬間、ぼっと顔に火が付いたように、柊は耳まで真っ赤になった。
(て、天然なの、入栄くんて?)
うろたえすぎて、思わずお釣りの千円札を取りこぼしたほどだ。
ふるえる指先で千円札を拾い上げ、どぎまぎしながらも意を決して顔を上げる。
と、入栄はいつもの人好きのする笑みを浮かべて、悠然とお釣りを待っていた。
(あ、あれ?)
柊の顔からふにゃりと力が抜ける。
抜けて、抜けすぎて逆に、反動で軽く眉根が寄った。
(なに、これ……)
幻? それとも、妄想?
担がれたの? でも、だとしたらそのメリットは?
寒すぎていよいよ幻聴が聞こえたのだろうか。
「吉崎さん?」
「あ、ああ、す、すいません。これ、お釣りです。あと、24センチ以上のお客さまには無料でシャンパンをプレゼントさせていただいてます。よかったら」
シャンパンが入った縦長の袋をのぞき込み、「これ、アルコール入り?」
「いえ、子供も飲める用なので」
「はあい。―――あ、そういえば、吉崎さんて、誕生日昨日か今日なの?」
「へっ?」
上目遣いにそう訊かれ、収まりかけた鼓動がまたぞろ勢いを取り戻す。
「だって名前が"のえる"だから」
(呼び捨てされた!)
「うん、そう……実は、今日なの」
「おめでとう!」
いきなり大きい声で祝われて、柊は魂が飛び出るかというほど驚いた。
が、驚いたのは声の大きさにじゃない。