やさしい色
大好きな人たちがしあわせそうでいる姿にほっとした。
早まらないでよかったと、ほっとした自分に嫌気がした。
ふわっと、掛け物をされるように抱きしめられると甘えたくなって、けれど体重をかけることはできなくて、柊はふるえる手で入栄のシャツを掴んだ。
「俺に預けてくれていんだよ、なにもかも」
耳の奥、何かが儚く壊れていく音がする。
頭を撫でられ、からめるように髪を梳かれて、柊はたまらず入栄の胸に顔を押しつけた。
「俺、吉崎さんのそんな優しいところに惚れたんだぁ」
「幻滅しないの?」
「しないよ」
はっきりと答えて、だって……、と入栄は囁きながら、子供をあやすように柊の背中をやさしく叩いた。
「―――俺も、同じだもん」
どういう意味か理解できず、顔を上げた柊の額にふっとキスが落ちる。
ぴくっと小動物のように目をまん丸にした柊を、入栄はふふっと呼気だけで笑った。
「お、おなじ?」
「そ、同じ」