やさしい色

 恐縮しながら受け取って、掬(すく)うように柊は入栄を見上げた。

 入栄は柊の高校のクラスメートである。

 ジャージーでエナメルを提げているということは部活帰りなのか、それとも今から行くところなのか。

 豪雨の下でも晴れ晴れと、屈託ない涼しげな笑顔は相変わらずで、
 鼻歌混じりに傘の汚れを雨で洗い落とすと、それを当然のごとく柊にもおすそ分けしてくれた。


「って、身体の方はセーフだった? ―――とか、これ訊くの何気3回目なんだけど」


 3回目と言われ、あわわと柊は赤くなる。
 眉を下げる入栄にこくこくと頷いてみせた。


「だ、だいじょうぶ」


 と応えてから、柊はしまったと思った。

 雨音に簡単にかき消されそうな弱々しい声しか出せない自分に嫌気がした。

 それでも入栄はニコッと笑って、


「よかった」と弾んだ声を上げてくれた。


 ―――その顔が、すごく印象的だった。


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