やさしい色

 だいたい、軽々しく人を見透かそうというのがそもそもやらしいし、傲慢だ。

 人となりを見抜いた上で、おまえには柊ちゃんを任せられないとでも言われたら殴ってやる。


「俺は、知ってる。―――和眞くん」


 古手川(こてがわ)和眞くん。

 吉崎柊が惹かれて止まない男。

 彼女と俺の足を引っぱる迷惑きわまりない男。




「柊ちゃんが誰を想っているかは…………知ってる?」




 入栄はおもわず目を剥いた。

 耳に絡みつくような不快な響き。



 今の問いかけはただの好奇心のそれではなかった。



 俺が吉崎さんに惚れていることを知っているだけじゃない……、



 こいつは、




(吉崎さんが自分を好きなことまで……)


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