やさしい色

 爽やかな見かけにそぐわぬ狡猾な光を柔和な男の中に見て、その温度差に入栄は内心でひるんだ。

 けれど次の瞬間、和眞くんはずいぶんと情けない顔になって、つま先に視線を落とした。

 一緒に眉毛まで下げられると、たちまちなんとも言い知れぬ微妙な表情になる。

 入栄は気後れしたようになって、ますます困惑した。いきなり気弱な顔をされても、強気になれるどころかいっそう真意が見えなくなって、途方に暮れる思いがした。



(……待てよ)


 もし、吉崎に惹かれることが苦痛でそんな顔をしているのだとしたら、有無を言わさず拳にものを言わせ、半殺しにしてやるところだ。


 ―――が、どうやらそうでもないようだと感じるのは、切なげな和眞くんを見ているとなぜか(とても不本意だが……)、いやでも堪らない気持ちがこみ上げてきて、胸を圧してくるからだった。


 ……苛々する。


 俺はこの男に、若干の感謝は覚えこそすれ、感化されるだけの好意を抱いたことはないはずなのだが―――……。



「言わなくてもいんだ。柊ちゃんが好きなら、そんなこと絶対言いたくないもんね」

「嫌味かよ。別に俺、そんなんで動じねーし」


 言葉のままが半分、虚勢半分といったところだ。

 吉崎に好かれているということが、入栄を揺さぶらないはずがない。



「吉崎さん、おまえが好きなんだろ。見てればわかんだよ」

「俺は、ミナと付き合う前は柊ちゃんが好きだった」

「優柔不断」



 和眞くんは鼻にシワを寄せて笑った。


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