やさしい色
「……俺は、吉崎さんを大事に思ってる。だから、吉崎さんが、おまえのことをただの友だちの彼氏っていう認識に落ち着けるまで待ってくれって言うなら、待ってあげたい」
「彼女のそういう潔癖なトコ、俺すごい好き―――……あっととごめんごめん……口が滑った。そんな鬼みたいな顔しないでよ。好感が持てる、ね。そうそう」
「俺を1番にしてくれるよう、努力はしてる。だけど、おまえを嫌いになれとは言えないし、無理強いだけはさせたくない。いずれ必ず好きになる、その確約があれば、俺はいつまでだって待てるんだ……」
語尾に向かうにつれ、声がしぼんでいく。
……情けないのは承知の上。
だが、契りのない不安定な中、彼女が気持ちにケジメをつけてくれるかどうかさえもわからず待ち続けることのもどかしさ。
囁く愛はちゃんと届いているのだろうか。
大っぴらに彼女に触れる名目も、今の俺の立場では曖昧でどこか宙ぶらりんのまま。
気にするなと、いくら自身に言い聞かせても、相手は純潔の女の子……躊躇わない方がどうかしてる。
どうしても自分に見切りをつけられず、このままでは入栄くんを傷つけるだけだからと、俺を案じて背中を向けられたりしたら…………
考え出したら気が狂いそうだ。
「想いは伝わる。
柊ちゃんは、おまえの苦しみもちゃんとわかって答えを出そうとしてるとおもう。悲観しないで。前向きに、今のまま、彼女を待ってあげて」
幸せにしたいと願ったはいい……。
幸せにする覚悟はできている。
が、彼女が俺の隣から離れていかない確率は五分……以下。
まるで先の見えない関係を思うと、不安でたまらなくなる。
「俺は、おまえほど器がでかくはないんだろうな……」
幸せにしたいと願っておきながら。
目を逸らした入栄を、しかし和眞くんは欠片も蔑(さげす)んだりはしなかった。