♥切なくてアブナイ△関係♥-短編-
運命の夏の前。
君がいなくちゃ、俺は…-啓介side-
俺の心はポッカリと何かが抜け落ちた。
何もする気が起きない。
勉強もスポーツも、楽しみにしていたドラマだってもうどうでも良くなった。
何かを口にすることさえ、ままならない日々が続いた。
俺はふとカレンダーを見る。8月も半ばだ。
良かった、夏休みで。ふと、安堵する。
だって君に会うと、君を連れ去ってしまいたくなる。奪いたくなる。
そして――俺が壊れてしまいそうになる。
……正直に言うと、君を、傷つけたくなり激情に駆られそうで怖いんだ。
でも俺は君を絶対に手にかけたりしない。
君は僕の、可愛い小鳥だったんだから。
(……、過去形、かよ。カッコ悪い)
親は、このマンションにはいないから、何かと便利だったりする。
多額の仕送りをしてくれるから、日々の暮らしには困らない。
親が海外にいることにも何の不満もない。
俺にここまでしてくれている親に何の不満があるというのだろうか。
周りの大人達は俺に同情の目をかけるが、
至って俺は可哀想なコドモではない。むしろ、幸せな方である。
そう。
俺は、彼女さえいれば、それだけで……。
(……くそっ!)
ずっと大事にしていた彼女との2ショット写真をぐしゃりと握る。
彼女の、笑った顔が歪む。
何を考えているんだ、俺は。
バカじゃないのか。
彼女の事は忘れなきゃいけないのに……。
あいつ。
あいつが現れてから、彼女はおかしくなった。
俺は全然目にもくれなかったが、
あの、大蓮寺 奏夜とかいう、どっかの財閥のお坊っちゃま。
女にいつも囲まれていた男、というイメージしかなかった。
そんな奴が彼女に近づいてきたのは数ヶ月前だった。