♥切なくてアブナイ△関係♥-短編-
「啓ちゃん!聞いて!」
「どうしたんだよ、そんな息切らせて」
「あのね、あのね」
彼女が少し頬を赤くしながら、嬉しそうに笑う。
「"あの"大蓮寺さんに話しかけられちゃったっ!」
「は……?」
なんでだよ、つーか何でそんな嬉しそうなんだよ。
そんな言葉が出てきそうになるのを必死に飲み込む。
俺は彼女にとっては"ただの"幼馴染。
それ以上でもそれ以下でもない関係なのだ。
「ふうん、物好きもいるんだな」
「あー!また、そういうこと言う!」
ぷく、と顔を膨らませる彼女。
元々ぽっちゃり体型に近い彼女がすると、顔がまるで……。
「マンジュウガニみたいだぞ」
「え?マンジュウガニって何??カニの一種?」
「……、もういい」
彼女がこういう性格なのを知っていても、
いじわるを言いたくなる。
俺って、まだまだ成長出来ていないガキだなとつくづく思う。
「大蓮寺さんって、啓ちゃんのこと憧れてるんだって~!」
「……は?」
……そんなはずないと思うんだが。
あいつはいつも俺を見る目が怖かった気がする。
テストの順位発表の紙が貼りだされたなんかは特に。
ま、大して今までは気にしていなかったが……。
(あいつ、梓に何をするつもりなんだ?)
絶対、彼女は騙されている。
言っても多分信じないだろうから、俺は話を合わせた。
「ふーん、そっか」
「は、反応うすっ!!」
「男に憧れられてもねぇ」
「女の子にもいーっぱいモテてるじゃんか」
拗ねた顔をした彼女。
俺は嬉しかった。
「嫉妬か?」
「そ、そんなんじゃないもんっ!」
「へぇ~」
「啓ちゃんのいじわる!!」
この時は本当に幸せだった、愛してた。
今でも君が欲しくて欲しくて、堪らないんだ。