♥切なくてアブナイ△関係♥-短編-

「……」
「どうしたの?」
「えっ、何でもないよ」

彼女はそう微笑みながら髪の毛を手ぐしで梳かして、僕を見つめる。
ふとした仕草もこんなに愛しいと思えるぐらい僕はどうかしてしまってる。
だからこそ、あいつの存在が邪魔で、邪魔で仕方がない。

「もしかして啓介君の所戻りたくなった?」

わざと意地悪な質問する。答えは決まっているというのに。

「……違う!そういうことじゃないよっ」

案の定、彼女は大袈裟に頭を振った。彼女をずっと見ていたから分かる――嘘だ。
嘘をつけない不器用な性格なところも大好きだが、
それは時として僕にとって刃にもなり得るのだろう。

「君は僕のものだ」
「うん。私は奏夜君が好き。私は…奏夜君のものだよ」

彼女は自分の髪の毛を触りながら、僕に笑いかける。
君は、その嘘だけは上手いんだな。
……ああ、俺が信じたいだけなのかもしれない。
きっと、そうだ。

「啓介君より?」
「もう、同じ質問ばかりね、奏夜君って。誰よりも大好きっていつも言ってるでしょ」

君の笑い声と風鈴の音が交じる。
その音色に、僕は天使の中に悪魔が確かにいることを感じた。

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