♥切なくてアブナイ△関係♥-短編-
運命の夏の後。
嘘じゃない本当の愛情-梓 side-
「はぁ……愛してる……」
奏夜君は啄むような優しいキスをしてくれる。
「ん、私もだよ」
ぽかぽか心が温かくなるようなキスに私は胸がきゅんと締め付けられる。
ぎゅっと抱き寄せられ、鎖でつながれるように腕を回された。少し苦しい。
「そ、奏夜君?」
少しびっくりして顔を上げると、目の前には瞳に涙を溜めた彼がいた。
「なんでそんなに梓は可愛いんだ。僕は……僕は……」
奏夜君が私の肩に顔を乗せる。心地良い重みと温かさと濡れた感触を覚えた。
もしかして、泣いてるの?
そっと奏夜君の顔を見ようとするけれど、彼は中々顔を上げない。
背中をさすって私は出来る限り優しい声で囁いた。
「何か悲しい事でもあったの?」
「……」
何も答えない。
だけど、それは想定範囲内だった。
奏夜君はかなりの自信家さんだと思ってるし、それ相応の地位や能力がある。
でも本当はそれ以上に臆病者なんだと私は思ってる。
「答えたくないなら言わなくてもいいよ。ずっとぎゅってしててあげるね」
私がそう言うと、奏夜君はより強く私を抱きしめる。
存在を確かめるように。
何が奏夜君をそこまで追い詰めてるんだろう。
私には知る由もないけれど、奏夜君を助けたい。
人一倍強がりで人一倍弱い彼に私は愛を捧げても良いと思っていた。
「奏夜君……大好きだよ」
奏夜君はいつも、この言葉だけは信じてくれた、魔法のコトバ。
このコトバを言うとね、奏夜君はとても嬉しそうな顔で笑うの。
その顔を見ると、ああ……奏夜君って可愛いなぁって愛おしくなるの。
その笑顔の中に少しだけの疑心暗鬼な表情も見て取れるけれど、
見て見ぬふりをする。
そうじゃないと幸せになんかなれない。
私を信じてくれる人なんて、多分、もう、どこにもいない気がする。
私は相当悪い女の部類に入っているから。