好きな人が出来ました。
『かわいい子なんて、ありきたりですねw』
『じゃあ、優しい』
『じゃあって何?wへー意外。優しい人が好きだったんだ』
『冷たい人が好きな奴なんていないだろう』
『ドMな人はそっちが良いんじゃない?』
『ああ、お前みたいな?』
『私は、ドMじゃないです!』
「楽しそうにメールしてるね、蒼」
「京香(きょうか)、おはよ」
「おはよ、まっつんそれ寝てんの?」
「そ。昨日も遅くまでバイトだったんだって」
私の隣でテーブルに伏せてる松本を指さして、京香が笑う。
私は打ち終わったメールを送信して、携帯を閉じた。
「相手誰?新しい彼氏?」
「違うよ。友達」
「それにしては、頬緩んでたよ?」
「…訂正、好きだった人」
「蒼が好きだった人?」
「そう。私が好きだった人」
目を見開いて驚いた顔をした京香は、確認の様に携帯と私を交互に見る。
驚くのも無理はないと思う。私が自分から好きになった人は、彼だけなのだから。
告白されて、付き合って、好きになって、振られる。
それを繰り返してきた私は、男性を自分から好きになった事なんてほとんど無かった。
唯一、彼だけは自分から好きになった。
メールの受信を告げるバイブが鳴る。
『あれ、違った?w』
「ほら、にやけてる」
呆れた様に笑う京香に指摘され気づく。
確かに、私の口角は上にあがっていた。