四つ葉のクローバー
あたしは今、どこにいるのだろう。
眠っていたのだろうか、目が覚めると、まるで雲の上にいるような、そんな気持ちいい場所に横たわっていた。
「ここ…どこ…?」
起きてみると、本当に雲の上なんじゃないかっていうように、まわりには霧のようなもやがかかっていた。
「…夢…?もっかい寝ようかな…眠いし…。」
これは夢の中だと思い、夢の中でもう一度寝ようとした、そのとき、
「お目覚めのようですな。」
どこからか、おじいさんの声が聞こえてきた。
「…誰…?」
声のしたほうを見てみると、長い白ヒゲを生やしたおじいさんが立っていた。
「わしは…神様じゃ…。」
「神様?」
…何この夢…神様って…。
「そなた、これは夢ではないぞ。ここは天国という所じゃ。」
「………は?」
「ショックを受けるかもしれんが…そなたはもう、あの世にはいないのじゃよ。」
「………え?」
な…なにこの夢…。
あたしがあの世にいない?
あの世ってどこのこと?
てか、神様?天国?
「…あたし…もしかして…死んだの…?」
「……そうじゃ…。」
嘘…。死んだ…?あたしが死んだ…!?
「あたし、死んだ記憶…ないんですけど…。」
「そりゃあそうじゃ。ここに来た人は皆、死んだときの記憶というのは消えておる。」
「…あたし、これからどうなるんですか?」
あたしは意外に冷静だった。
「まず三日間ここで生活してもらう。その三日間に悪い行いなどしなければ、手続きをして新たな人間に生まれ変わることができるのじゃ。」
「天国にも手続きとかあるんだ…。てか、生まれ変わることってできるんですね!」
あたしは普通に感動してしまっていた。
「悪いことしなければな。まあ今まで悪いことした奴は滅多におらんがな。」
天国って…イメージでは良い行いをした人だけが来るって感じだしね(笑)
…と、ここであたしは一つの疑問がわいた。
「…あの!生まれ変わったら前世の記憶は消えちゃうんですか?」
「…そなたには、忘れたくないことがあるのかね…?」
もう死んだからなのか、何故か前世の記憶はそんなに鮮明には残っていない。けど、あたしには、前世ですごく大切な人がいた。
その人のことはちゃんとはっきり覚えてる。…というか、その人のことしか覚えてないんじゃないかってぐらい、すごく、すごく、大切な人。
“杉田 勇人”
あたしの、恋人だった人。
あたしの、大好きだった人。
勇人のことだけは、忘れたくない…。
「…忘れたくない人が…いるんです…。」
「…そうか…。…基本的には、前世の記憶は、生まれ変われば消えるよ。そなたも、まだ生きていたころ前世の記憶などなかったじゃろ?」
「…そうなん…ですか…。」
忘れちゃうんだ…。
勇人のこと…。
「…じゃが…忘れたくないという気持ちがとても強いものであれば、生まれ変わってもそのものに対する気持ちや感覚だけは忘れず覚えておるものじゃ…。」
「…そうなんですか…!?」
「その人のことを、生まれ変わっても忘れない自信が、そなたにはあるかね?」
…忘れることなんて、できるわけない…。
勇人のこと、忘れることなんてできない…。
「…もちろん…。絶対に、あの人への想い、忘れずに生まれ変わります…!」
「…よろしい…。では、案内するから、ついてきなさい。」
こうして、あたしの天国での3日間が始まった。