キミの香り[短編]
――嫌だ…嫌だ…
信じたくなんかない…!!
俺は頭の中で、慰安室での光景を思い出していた。
『…おい、瑠誠…?』
「茉矢な、…事故にあってな…
死んでしまった……」
受話器の向こうで、祥ちゃんの息を飲む声が聞こえた。
『は…?嘘、…やろ?』
「……ほんと…なんよ…」
嘘なんかじゃない。
俺が一番信じたくない…
俺が一番認めたくなんかない…
でも…
茉矢はもうこの世のどこにもおらん…
『お前…今どこなんか!?』
「総合病院…」
『今から行くから!!!
絶対にそこで待っとき!!ええな!』
電話が切れて、俺はいつの間にか深い眠りについていた。