キミの香り[短編]
「……瑠誠くん…」
中では、茉矢の家族が泣いていた。
「……茉矢?」
ゆっくりと、中央に置いてある真っ白なベッドに近づいた。
そこに横たわっている茉矢の顔はあまりにもキレイなままで。
今にも『ただいま』って起き上がって来てくれそうなくらい。
「茉矢…嘘、やろ…?
なあ…嘘なんやろ…!?
みんなで俺を騙しとるんだよな…!?
なあ茉矢…茉矢起きろよ…!
……おい茉矢…!!!」
「瑠誠くんもう止めて…!!」
冷たくなった茉矢の手を、必死に握りしめる。
そんな俺に、茉矢のおばさんが言った。
「茉矢はもうおらんの……
もう…止めて…」