赤い狼 伍






「どうかしました!?稚春嬢ちゃん!!」





がばりっ。起き上がって辺りを見渡す。すると、みどりが心配そうな顔で私を見つめていた。




「夢……?」



まだ荒い息で言葉を紡ぐ。


夢、か。夢なら良かったんだけど…。




「稚春嬢ちゃん…大丈夫ですか?」



「だ、大丈夫……。」




ぽたり。動かした口によって頬で止まっていた汗が顎を伝って布団に落ちた。


息がまだ、荒い。




「み、どり。」



「はい、なんですか?稚春嬢ちゃん。」



「みどりぃ……っ、」



「はい、ここに居ますよ。」



「こわ、かった。」



「…またあの夢見ちゃったんですか?」



「うん。最近、見てなかったのに…。」




ぎゅう。目を強く閉じる。


すると、さっき見た夢が頭のなかでグルグル回ってきて、掻き消すように頭を振った。




と、




「……っ、」



ふわり。

優しく包まれた体。



私を抱きしめているその腕はみどりのもので、ビクリと震わせた私の体をまた更に強く抱きしめてくる。



まるで、大丈夫だよ。と言ってくれるように。




「ふ、ぇ…っ、」



「大丈夫ですよ。俺が居ますよ。俺が。」


なので、安心していいですよ。




そう私に優しく告げて背中を撫でてくるみどりはとても温かい。


だから逆に、布団に入っていたはずの私の体がひんやりとしていることが直ぐに分かった。

私の体がみどりの体温を奪っていく。




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