赤い狼 伍
「なぁー。」
「なんだよ。」
「稚春………。」
「………。稚春に向ける視線を俺に向けんな。」
「会いたい………。」
「………。」
棗はこの時、思った。
このままだと稚春病のコイツに鬱にされかねないと。
「なぁ、まだ稚春見つかんねーの?」
連が上目遣いで棗に尋ねる。悲しみを含めた目を向けられた棗は「……さぁ?」曖昧な返事を溢した。
稚春が《SINE》を飛び出た後、連は稚春が乗り込んだタクシーを早急に追いかけた。
が、抜け道をいくつも使われタクシーを見つけることはできなかった。
それならばとタクシーのナンバーで探しあてようとしたのだがあまりに急なタクシーの登場だったのでナンバーを覚えておらず、見付ける術をなくしてしまっていたので今も稚春の居場所が分からないのだ。
そこで、希望の光扱いされるのは勿論
「さぁってなんだよ棗ー。」
《SINE》の縄張り情報を取り扱っている裏の番長とも言える、棗だ。
「何、稚春に会いたいの?」
「さっきからそれしか言ってねぇよ俺。」
「分かってたんだ。」
くるくる。連は持っていたコントローラーをその辺にあったクッションと持ちかえてため息を溢す。
そんな様子を目の端で捉えながらカタカタとパソコンをいじる棗。
「どこに居んだろうなぁ、稚春。」
「案外その辺に居たりしてね。」
「それはないだろ。」
「稚春のことだから分かんないよ?」
ふと、パソコンをいじる手を止め棗が連に振り返り言う。
その時、金に映えるピンクの色がぱさり。棗の目にかかった。
それを見てコイツって何考えてんだか分かんねぇ。と眉を顰める連。だけれどそれをすぐに崩して今度は無意識に目を垂らした。
「一回だけでも会いたいって思うのはワガママなんかな。」
「………。」
「なぁ、見付かった?」
連の見付かった?攻撃に棗が目を細める。それでもまだ「見付かった?」問い続ける連はもはや稚春病ではなく稚春中毒だ。
「…………、さぁ、ね。」
三度目の見付かった?攻撃に静かに答えた棗の口元が片方だけ上に上がっていたことは連には見えなかった。