赤い狼 伍
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酒は飲んでものまれるな。
「おー、飲め飲め!!飲んでしまえ!」
「春ちゃあーん。」
とはこのことだと切実に思った。
昼過ぎ。朝から始まったお祝いはもはや宴会へと変化していた。
「春ちゃあーん、このワイン飲んでいーい?」
「真理子ちゃん、絶対飲み過ぎだと思うよ。止めておいた方がいいよ。」
「やだなー。大丈夫だってぇー!このワイン飲んでほしそうだもん、ものすっごく!!」
「真理子ちゃんが飲みたいだけでしょ…。」
ひとつ。息を盛大に溢す。
なんだってこんなに盛り上がってるんだ。
真理子ちゃんはベロンベロンだし主催者は真理子ちゃん同様
「はははは!いーい飲みっぷりだな!気に入った!!!」
酒にのまれてる。
愉快愉快と言わんばかりに大きな口をめいいっぱい開けてがははと笑っているダーリンを冷たい目で見つめる。誰かこやつを止めてくれ。
そうしてる間にも私へとダーリンがいれてくれたワインをグイッと一気に煽っている真理子ちゃん。
それに頭を抱えそうになっていると、私の左隣に座っていたみどりが「稚春嬢ちゃん?」心配そうに顔を覗きこんできた。
「………えーと、大丈夫、じゃないですよね。」
「うん。」
「即答ですか。」
若干苦笑いしているみどり。
そりゃそうでしょうよ、お祝いでもなんでもないじゃない。ただ飲みたいだけでしょうが。
ただ飲みたいだけなら夫婦で縁側にでも腰かけて飲みなさい。本当に夫婦そろってお酒にのまれるんじゃありません。
「えーと、稚春嬢ちゃん、顔が怒ってます。」
「なんだかもう疲れた…。」
「そうですよね。うーん、そうですねぇ。」
少しだけ長く目を瞑って息を吐くと思ったより重いため息が零れて苦笑する。だけど私の横で何やら唸っている男に気が散って「ちょっと煩いんだけど。」
と言葉を発した時だった。