赤い狼 伍
「人は見かけによらないのに…。」
ぽつり、零れる言の葉。
それはあまりにも静かなこの空間に虚しく響いて、なんだか泣きそうになった。
やだな、私なんだか弱気になってる。
そう思って空を仰いでみるけど、溢れだしそうな涙は目の縁にどんどん溜まっていく。
だから涙を堪えるのはやめてまた、前を向いて歩き出した。
そして今にも目からこぼれ落ちそうな涙を拭い、大きな門の前に立つ。
門の横に掲げてある黒に金の文字の表札がきらり、光って私を歓迎する。
さぁ、目的地の《藤山》だ。