赤い狼 伍
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「は、え、えぇっ!?」
大きな叫びに堪らず耳を塞ぐ。それでもその声を小さくするわけもなく。
「稚春嬢ちゃんじゃないですかっ!!」
相変わらずな低い声を出した目の前の真っ赤な服を着た黒髪の編み込み男。
それに盛大なため息をついて180は優に越えているであろう"そいつ"を見上げる。
「……久しぶり、みどり。」
「…っ、稚春嬢ちゃ~んっ!!」
「ぐぇっ!」
く、苦しっ!!!
反射的にみどりの背中を叩く。抱きつかれたのはいいけど回ってきた腕が私の首をちょうど締めて酸素が吸えない。困った。これは困った。
「稚春嬢ちゃん、逢いたかったです!もう本当に…、五年くらい逢ってないじゃないですかっ!!俺は逢いたくて仕方なかったです!朝起きたら居ないし…。組のもんも稚春嬢ちゃんが居なくなってから元気なかったんですよ…。あ、俺ももちろんなかったですよ!!もうずっと逢いたい逢いたいばっかり言ってましたもん。でもそれで組長には怒られちゃったんですけどね。「女々しい!!もっとドンッと構えてろっ!逢おうと思えばいつでも逢えるじゃねぇか。」って。いや、もうあれは感動しました!稚春嬢ちゃんにも聞かせたかったです。あ、それとこんな事もありましたよ!!あれは二年前の冬だったと思います。あの時は凄い雪が降っていて…」
長い。
とんでもなく長い。
ベラベラとまるで逢えなかった五年間を埋めるように喋るみどりに口がぽかんと開いた。
こんなに喋るみどり始めて見た。つーかお前男だろ。喋りすぎだろ。