とっておきのSS
俯いて考え込む結衣を、ロイドがふわりと抱きしめた。
「その子が心配なのか?」
「ううん。たぶん大丈夫」
なにしろロイドはこうしてここにいる。ということは、無事に元の場所に戻れたという事だ。
結衣はクスリと笑って抱きしめ返した。
「大きくなったのね」
「わかるか?」
「……え……」
耳元で囁かれ、背筋がゾクリとする。その声音から、このエロ学者がまた下の想像を巡らせている事は容易に理解できる。
結衣は顔を上げてロイドを睨んだ。
「ちょっと! 何考えてるのよ」
「一週間ぶりにおまえに会ったんだ。考える事など決まっている」
そう言ってロイドは、結衣を軽々と抱き上げ、ベッドに横たえる。
身体を起こそうとしたところを、覆い被さってきたロイドによってベッドに押さえつけられた。
素早く外したメガネを、ロイドは長い腕を伸ばしてベッド脇にある棚の上に置く。
そして顔を近づけてきた。
結衣は焦ってロイドの両肩に手をつき、抵抗を試みる。
「いきなりなんなの! ちょっと、待って」
「待てない。いつもより遅れた分、焦らされてそろそろ限界なんだ。それを煽ったのはおまえだろう」
煽ってなどいない。勝手に思考を飛躍させて煽られたのは、そっちの自業自得ではないか。と反論しようとした口を、いきなり唇で塞がれた。
一週間ぶりの甘くとろけるようなキスに、結衣はあっさり陥落する。
少しして唇を離したロイドが、かすれた声で囁いた。
「ユイ、愛してる」
胸の奥がキュッとなる。ずるい。煽っているのはどっち?
結衣はロイドの首に腕を回してしがみついた。
嬉しそうに目を細めて、ロイドが再び口づける。
静かに目を閉じて、結衣は一週間ぶりの温もりに身を委ねた。
(完)