とっておきのSS


 ワンホールの上には大粒イチゴがいくつも乗っていた。
 ロイドは充分すぎるほど堪能したはずだ。

 結衣がたったひとつ残しておいた楽しみまで奪わなくてもいいではないかと思う。
 だが、今さら取り戻す事も出来ない。

 無性に腹が立ってきて、結衣は頬を膨らませ、プイと横を向いた。


「もう! 楽しみに取っておいたのに!」
「フォークを置いて茶を飲んでるから、もういらないと思ったんだ」


 ロイドが言い訳しているが、聞く耳持たない。
 むくれたまま無視していると、少ししてロイドが横から結衣の頬を指先でツンと突いた。


「おまえ、唇にクリームがついてるぞ」
「え? ウソ……」


 慌ててロイドの方を向いた途端、唇に口づけられた。
 突然のキスに、結衣は目を見開いて硬直する。

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