とっておきのSS
「ウソじゃない。こんなに甘いじゃないか」
「……え……」
眼鏡を外したロイドは、結衣のあごに手を添えて顔を上向かせた。
濃い緑の瞳が妖しい光を湛えて、結衣を真っ直ぐに見つめる。
顔が近づいてきた。
「イチゴの風味だけ返してやる」
目の前で囁かれ、結衣は黙って目を閉じる。
甘いのはロイドのキスだと思う。
ローザンが戻ってきたらどうしよう。
そんな事を頭の隅で考えたものの、ロイドのキスには抗えない。
重なった唇から、口中に微かに広がる甘酸っぱい風味。
甘いキスに酔いしれて、苛立ちもどこへやら消し飛んでしまったようだ。