私とテニスとあいつらと
もう精神的にも肉体的にも追い詰められている私には、テニス部レギュラーの皆さんは魔王にしか見えません。
桑本が開けておいてくれたドアの奥へ一歩踏み出す。

普通の人にとっては何気ない一歩だが、今の私の立場では、これは大きな一歩である。

レギュラー達の視線が突き刺さる。居心地が悪すぎて、わずか数十秒の時間が、私には何分に値するような長さに感じられる。

「よお」

誰か居心地の悪い時間を破ってくれ!と心の中で叫んだのは私。
けどさ、よりによってその居心地の悪い時間を破ったのが幸田なのはなんじゃないかい?

「おえ・・」

ここにいるだろうメンバーは予想がついていたけど、本当に目の前にそのメンバーがいることをこの目で確認すると、自然にうめき声が出てくる。
私の目の前には幸田がミーティングで使うやつらしき長いテーブルの奥に座っている。後のやつらは好きな場所に座っている、と言った感じだ。

「お前、ここに呼ばれた理由はわかるよな?」
「さあ・・・・」

なんとか嘘を貫き通そうとする私に対して、幸田は呆れ半分な声を出す。

「お前、往生際が悪いぜ。証拠はあるんだよ」

そう言うと幸田は、自分の足元から私が落とした黄色いハンカチとスニーカーを出してテーブルの上に置いた。

「なんですかそれ」

私は平然を装い、いかにも「私は関係ありません、無関係です」という態度を取った。

「全部、お前のだよな」

私は、あたりまえだろ、それ全部私のですもの。という気持ちだった。

しかし、ここで「そうですね」なんて言ったら、私はきっと五体満足で明日の朝日を拝む事はできないだろう。


そこで私のたどり着いた結論は「嘘を意地でも貫き通す」

自分、いろんな意味で頑張ってるな。
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