私とテニスとあいつらと
「・・・・・いえ、違います」
「あ・・?」

勝利が確定したと思っていた幸田は、私から予想外の答えが返ってきたことに驚いていた。

「それは私のじゃありません。まったく違います」
「てめぇ・・・ここまで来て、まだそんなこと言ってんのか?」
「とにかく私は関係ありません。あなたの人違いです勘違いです」

もう後がない私は、頭に思い浮かんだ言葉をとりあえず口に出す。
そして、その往生際の悪さに周りのレギュラー達が次々と口を開いた。

「・・・なんか、しぶとい奴だよな。あいつ・・」
「そうっスね」
「幸田相手にここまでやる子、なかなかいないよね」
「だよなー。なんつーか、尊敬するな」

マジで外野がうるさい。

くそう・・・!ここでこいつらに何か言い返せたらどんなに楽な事だろう。唯一の顔見知り、連に目を向けると、罰が悪そうな顔をして目を逸らされてしまった。

「そ、それだけの証拠じゃ法律には勝てませんよ・・・!」
「お前、どこまで行くつもりなんだよ」

頭に思い浮かんだ言葉を次々に言っている私は、自分でも何を言っているのかわからなくなってきている。

「・・・そこまで言うなら決定的な証拠を見せてやるよ!」

幸田はそう言って舌打ちをすると、イスから立ち上がり、私が落としたハンカチとスニーカーを持って私の目の前まで歩いてきた。

「お前、井上美月と言ったよな?」
「・・・それが何か?」
「これを見ろ!」

そう言って幸田は私の目の前で折り畳んであったハンカチを広げ、ここだと言わんばかりにハンカチの裾を指差した。

「お前の負けだな」

私が幸田の指差した所を見ると


「INOUE MITSUKI」


と大きく刺繍がされていた。
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