私とテニスとあいつらと
「ぐっ・・・!」
「それと、あともう一つ」

ひるんでいる私に、幸田は追い討ちをかけるようにスニーカーのかかとの部分を目の前に出す。

「これだ」

かかとの部分に目をやると、そこには黒い油性のペンで力強く「井上美月」とフルネームが書かれていた。

「お前、どうしようもないアホだな」



・・・・そう言えば私、自分の持ち物全部に名前書いてあるんでした。



「負けましたスイマセン申し訳ございませんでした」

嘘がばれてしまった私は、幸田にひたすら謝った。そして思いついた謝罪の言葉をひたすら口に出す。もうその時の幸田の顔と言ったら、満面の笑みというんでしょうか。

幸田ファンが見たら即キュン死にしてしまうような、これ以上ない素晴らしい笑みを浮かべていた。

これには、長い間、共に汗を流してきたレギュラー陣もビックリ。

「そうやって最初から素直に謝ればいいんだよ」
「はいスイマセンでしたもうしませんマジでスイマセンでした」

これほど自分が情けなく見えるのは初めてだ。しかし、我が身が大切な私は手段を選んではいられない。

「あんた・・・自分の名前書いてあるもの落としてくなんてあり得ないっスよ」
「たしかに・・・・」

たしかに、私としたことが・・・!なんて事をしてしまったのだろう。

私は生まれて初めて自分を憎いと思いました。

すると頭の上からフフンと勝ち誇ったような笑い声が聞こえた。

「まあいいさ。おかげで探す手間が省けた。この俺をここまで動かす女はお前しかいねぇぜ?」

・・・・あぁ、そうですか。しかし、私を探すために動いたのはあなたじゃなくて他のレギュラー達ですけどね。

今日の朝、校門のところでレギュラー達が頑張って私を探している中、幸田はただ突っ立ってるだけだったのは、この私の目がしっかり見てました。
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