私とテニスとあいつらと
「おい美月!それより、早く二人止めろよ!!」
「あ、う、うん。ちょっと二人とも!やめなさい!!」

私が幸田と蘭に向かってそう叫ぶと、体育館にいた人たちの視線が一斉に私に向いた。前の私なら「嫌だなこの感じ~」と思うだろうけど、最近はそんな視線にも慣れてしまいました。

あぁ・・・慣れって怖いですね。

「美月っ・・・見ちゃだめぇ!!」

言っていることはどこかの囚われの姫だが、よく目を凝らして見てみるとそれを言った蘭は幸田の襟を鷲掴みしていた。

あれ?竹刀で喧嘩してるんじゃないの?

そんな疑問が頭をよぎったが、もうこういうのにも慣れてしまった私はあえてそこには触れず、こんな事になった理由を聞くことにした。

「蘭ストップ!そこまで!なんでこんな事になってるの?」
「美月・・・それはね」
「修学旅行の班あるだろ」

蘭は幸田の襟を放して口を開いた瞬間、幸田が横から口を挟んできた。

「あ、うん。私とレギュラーのでしょ?」
「そうだ。それがこいつには気にくわねぇらしくて部室に乗り込んできたんだよ」

蘭は私と話そうとして口を開いたのに、幸田によってそれを邪魔されたのがイラっときたのか標的を私から再び幸田へ移し、自分より体の大きい幸田の襟をガシッと掴み上げ、そのまま宙へと浮かせた。

そう言えば蘭はバの付く怪力を持っていたんですね。

「幸田!いくらあんたがこの学校で何やっても許されるとしても、暴君にも程があんのよ!」
「んだと?!テメェこそ俺たちの邪魔してんじゃねえ!」
「どっちが邪魔よ!あんた美月の気持ち考えた事あんの?!強制的にマネージャーやらされて、そのうえ修学旅行の班まで一緒なんて・・・今すぐ美月を解放しなさい!!」
「はんっ!美月、お前はこのままでもいいよな?」
「あんたまだそんなこと言ってんの?!こいつらがいる班なんて嫌よね美月?!!」

目を血走らせ、歯茎を剥き出しにして私に問い掛ける蘭。正直、夢に出てきそうなくらい怖い。
しかし、今こいつらを止められるのは私しかいない!

「私・・・・別にこのままでもいいよ?」

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