私とテニスとあいつらと
・・・・・乙女の力って凄いなと今改めて実感させられました。

「きゃー!だよねだよね!!やっぱりあの生徒会長の仕事してる時の顔もカッコいいよね!」
「あー、わかる!あの真剣な眼差しってゆーの?最高よね~!!」
「ってゆーか、もう幸田様にだったら何をされてもいいわ!」
「「だーよねー!!」」

私の目の前にはキャーキャー言いながらピンクオーラ全開!な乙女3人。その幸田様とやらを語ってもうすでに30分経過。それでも飽きることなく幸田様を語っている3人を引き気味で見ていると、私の隣に座っていた松谷蘭と呼ばれる女の子が話し掛けてきた。

「ごめんねー。あの子達、熱狂的な幸田のファンなのよ」
「え?ファン?!」
「そー。だからあの子達に幸田を語らせると止まらないわよ」
「そ、そうなんだ・・・」

蘭は、この4人の中でも一番気の合う女の子。たしか、どっかの大きい会社の社長令嬢で頭脳明晰、容姿端麗、かつ運動神経抜群。そして怪力。テコンドーをやっているらしく、テコンドーの大会では一桁の順位に入るらしい。

「ねー、蘭。蘭は幸田様?のことどう思ってるの?」

私が蘭にそう聞くと、蘭はあのきれいな顔をこれでもか!ってくらいに歪ませて、それはもう鬼のような形相をしてしまった。

「嫌い。大っ嫌い」

そして話を聞いていると、蘭の中では世界で一番目に嫌いらしい。

「いやー、ホントに消えて欲しいわ。むしろ私がこの手で消してやりたい」

そういって殺気を出している蘭に、この人に逆らってはいけない、と私は強く心に誓った。それと同時に幸田ファンの女の子3人が突然反論。

「えー!なんで?」
「幸田様サイコーじゃない!!」
「もー、蘭ってば。幸田様のどこが嫌いなの?」
「全部」

興奮気味にブーイングしている幸田ファンの女の子達の質問にさらりと答える蘭。その後もギャーギャー言っている女の子達の前でも涼しい顔をしてる蘭は凄いと思う。きっと今私が、蘭の立場にいたら怖くて涙目になってます。

「あ、もうこんな時間!」
「あー、ホントだ」
「もう帰ろっか」
「だねー」

時計を見ると、もう7時。どんだけ語ってたんだよ、と幸田様ファンに突っ込みを入れたくなります。


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