わたしががんばっても。
晴香side*
麻琴は涙をうっすら浮かべながら行ってしまった。
フン。
「…アンタが悪いんだから。」
たいして美人でもない木下さんが、稜を奪っていくから。
稜とは塾で出会った。
わたしと稜は中2で、塾で同じクラスで隣の席だったから仲よくなった。
わたしが稜を好きになったのに時間はかからなかった。
ちょっかいをかけてきながらも、時々見せる優しい顔に胸が高鳴った。
「中村君さ、晴のこと好きなんじゃない?」
それは中学3年の卒業を間近に迎えた日。
一緒に塾に通っている親友の兼子 紗江が言ってきた。
「…そうなのかな。」
「そうだよ!他の子にあんなちょっかい出さないもん。」