淡夢【短編集】
「また鏡に映る自分をみて『美しい……』とか呟いていたんでしょ?」


サナは人を小バカにするようにニヤけながら言った。


「そう言うキミは、この国随一の貧乏人じゃないのか?」


「なっ!!」


サナはショックを受けている。


「そんなこと―――」


「でも……この国随一の美しさだよ」


「な、なななっなに言ってんのよ!」


サナは真っ赤なった顔を両手で隠して背を向けた。


「クスクス」


僕はサナを後ろから抱き締めた。


「うわっ!!」


僕は混乱ぎみのサナの耳元でささやいた。


「キミに会えてよかったよ……」


そうするとサナは何かの呪文でもかけられたようにピクリとも動かなくなった。


「…私もだよ……ファイ…」




僕たちが初めて出会ったのは……


ただの偶然だった。



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