淡夢【短編集】
今から2年前。


滅多に人が出歩かない夜中だったな。


僕は、昼間はほとんど出歩かなかった。


昼間に出歩いても、僕と釣り合うほどの人がいなくて、ただ悲しくなってしまうだけだからだ。


自分だけがいつも人ゴミの中で浮いていた。


この国のお姫様も、おとぎ話に出て来るような端麗な容姿の姫様じゃなかった。


これは余談だが、僕は王様に直々に呼ばれたことがある。


だから姫様を見たことがあったわけだ。


僕はそのとき、大きな期待は、大きな絶望を生むだけだと知った。


とにかく、そんなわけで、真夜中しか外に出ない僕は、その日いつものように、食糧を買うために夜間営業の店に向かっていた。



僕が中央の広場を通ったとき。


僕は……見つけた。


月の明かりだけが照らされている広場の真ん中で……



一人の美しい少女を……



僕は見つけたんだ。



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