淡夢【短編集】

僕はサナから手を外し、ベットに座り込んだ。


「まだ昼か……どうりでまだ眠いはずだ。きっと市場はにぎわってるんだろうな……」


そんなことを考えていると、サナが僕の寝間着の裾を握っていた。


よく見ると、とても小さな力で引っ張っていた。


「ん? どうしたんだい?」


「ねぇファイ、市場に行かない? たまには……その……昼間に……」


サナは自信がなさそうだ。


僕がその願いを受け入れる可能性は低いと思っているのだろう。


僕たちは真夜中しか一緒に外に出たことはなかったからなぁ……


しかし、それに気付いてしまっては、僕はその願いを叶えてやりたくなる。


「行ってあげるから、そんな顔はしないで」


サナは満面の笑みを浮かべてくれた。


「やったー! ファイとデートだぁ!」


やれやれ……



やっぱり僕は……



サナが愛しくてたまらないようだ……



< 21 / 57 >

この作品をシェア

pagetop