淡夢【短編集】
一ヵ月の月日が流れ、やっと治療費が溜まった。


病院へ駆け込んだ。


病室に急ぐ……


サナ……


これだけ走ったのだから……


治ってくれよ……


元気になってくれよ……


キミの笑顔を……


見せてくれ……


二人組の女性とすれ違ったとき……


僕は聞いてしまった……


「サナって子、亡くなっちゃったんだって……」


僕の足は止まる。


「えぇ!? あんなにいい子だったのに……」


「うん、病院の子供たちとよく話したりしてたらしいわよ……」


「私の息子なんて退院したあと『サナ姉ちゃんに会いに行く』って言って―――」


サナが……死んだ?


「サナっ!!」


僕は勢いよくサナの病室のドアを開けた。


サナは日差しの差し込むベットで仰向けになって眠っている。


横には医師と看護婦が悲しい顔をしている。


僕はサナの横に行った……


顔は綺麗なままだ……


なんだ……


やっぱり死んでなんかいないじゃないか……


医師と看護師は何も言わずに病室から出て行った。


「サナ……

さぁ、目を開けてくれ……

金なら持って来たよ……

キミは治るんだ……



ねぇ……



いつものように……



笑顔を見せてくれよ……」



僕の顔に涙が滴った……



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