淡夢【短編集】
レストランを出て、予定通り近くの映画館へと足を運ぶ。


映画館に入ろうとしたとき、君はいきなり首筋を押さえながら高い声をあげた。


「キャっ!! 冷たっ!」


「どうした?」


君は上を見上げた。


「あのつららから水が落ちて来たみたい……」


上を見ると、溶けかけの氷柱が、その先端に水滴を溜めていた。


僕は君を小馬鹿にするように笑い、映画館に入ろうと自動ドアに向かったが、ドアには紙が張られていた。


『自動ドアが故障したため、横のドアから御入館ください』


しかたなく隣りの手動のドアから入った。


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