淡夢【短編集】
映画が終わると、君と別れを告げる駅へ向かった……


たかが一秒が、この上ないほど楽しかった……



でも……



楽しい時間は……



一瞬で過ぎていった……



券売機で君は一番遠くの町……僕は一番近い町の切符を買い、改札を抜けた。


僕たち以外だれもいなかった……


君の電車が来るまであと数分……



少しでも……



少しでもドラマのそれに近付きたくて……



僕は黙ったまま君を後ろから抱き締めた……



そのとき……



別れることを仕方ないの一言で割り切った僕の……



まるで風船のように軽いと思っていた想いは……



本当は……



別れが迫っている二人の一秒ぐらい……



重いものだとわかった……


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