ペテンの道化師
「お嬢さん、大丈夫?」
「…アナタは…だれ?」
涙ぐんでる目をこちらに向けて少女は尋ねた。
そうだ。
ボクは今化粧をしていないから、サーカスのピエロだと気付かないんだ。
「ボクは…ピエロだよ。」
「ピエロさん?それが名前なの?」
名前…。
そんなものボクは持っていない。
「そう。それが名前なんだ。」
「そうなの?私はキルト」
「キルト…どうして泣いているんだい?」
ボクは少女の隣に腰を下ろした。