Fake Love
「楓ちゃん、緊張してるのは分かるんだけどもう少しリラックスして。せっかくカナとデート出来るんだから」
「……」
別にデートなんかしたくないし。
「何万人もの応募から選ばれたんだから」
「……」
いや、『やらせ』だって知ってます。
だいたい吉武さん、顔笑ってますよ。
「吉武さん、そんなこと言ったって山科さんには初めて尽くしのことだし。それにあのギャラリーの女の子達の視線だけでも恐いよね」
「は、はい」
それはマジで恐かった。
「ハハハ…みんな羨ましがってんだよ。だから尚更さ楓ちゃんに嬉しいって顔してもらわないと」
「……」
嬉しくなんかこれっぽっちもないですから。
「今度は大丈夫よ。ホテルだから。ギャラリーはいないから」
「はぁ。あ、あの」
「はい?」
「撮影はいつまでかかるんですか?」
さっき聞けなかったことを今のうちに聞いとかないと。
「撮影は夜まで掛かるよ。要、時間とかも言わなかった?」
「はい」
――
―
これで20000円の訳がよく分かりました!
あの馬鹿兄貴!
よくも人を騙したわね。