Fake Love




「桐生奏人って知ってるか?」


桐生奏人?


誰だっけ?


首を傾げると


「そこまで芸能オンチかよ」


「……」


失礼な。


た、確かにあまりテレビ見ないし疎いとは思うけど。


「『Esperanza』って知らないか?」


『Esperanza』ならさすがに疎い私でも知ってる。


「それくらいは知ってるよ。人気もあるし実力あるグループじゃない」


彼等の曲は好きだ。


「あぁ。そのボーカルが桐生奏人だ」


ボーカル?


「確か『カナ』じゃなかったったけ?」


「…そのカナの本名が桐生奏人だ」


「あ、そう」


そこまでは知らないわよ。


「で、バイトって?」


それの方が気になるし。


「あぁ。その『Esperanza』のファンクラブ限定の冊子の撮影があるんだ。で、女の子が足りないからよかったらお前に手伝ってほしい」


撮影の手伝いって?


「そんな難しいことじゃないから。向こうの言う通りに動いたらいいだけだ。20000出すと」


に、20000も!


しかも一日で!


「やります。やらせて下さい。」


お金に釣られた私は内容もよく聞かずに二つ返事で引き受けた。


「撮影の手伝いなら動きやすい恰好の方がいいよね」


「そ、そうだな」


あの時、兄貴が変な顔した理由は今日まで分からなかった。


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