Fake Love



「楓ちゃん」


「逃げてもいいですか?」


「ん?」


背中に回った手に少し力が入った。


「逃げたい?」


私の顔を覗き込み


「……」


「楓ちゃん」


「いいえ。逃げません。それより桐生さんこそ」


「ん?」


桐生さんの手はいつの間にか頬を撫でている。


「私を知れば逃げ出したくなるかも知れ ませんよ」


「……」


「今の桐生さんは私をいいように買い被ってるから」


撫でる指の優しさが気になる。



「言ったろ。俺は自分の直感を信じてるって。その直感が楓ちゃんだって言ってるんだから逃げ出すなんてありえない」


そっと口づけを。


それはほんの掠める程度の優しいキス


「楓ちゃん、俺と付き合ってくれる?」


「桐生さん」


「ん?」


桐生さんの腕から離れ、ちょっと距離を開けて


「よ、よろしくお願いします」


深々と頭を下げる。


「クッ!クククク…」


…へっ?


頭上から笑い声が降ってきた。


顔を上げると


やはり


「ハハハ…」


大爆笑してるし。


この人はなんでいつも私のことを言うことにこんなに笑うの?


それに私は『お願いします』って言ってんのに。


やっぱり失礼だ。





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