Fake Love
「無理に笑うなんて出来ないよな」
へっ?
急に声を掛けられて思わず顔を上げて
「やっと見てくれたね」
「えっ?」
声の主はおかしそうに
「一回も俺の顔をまともに見てくれてないでしょ」
「あ、ご、ごめんなさい」
挨拶の時もちらっと見ただけだったかも。
「それに自己紹介以来初めて話してくれた。例え謝りの言葉でもね」
「す、すみません」
そうよね、別にこの人に非があるわけじゃないんだもん。
この人はただ仕事をしているだけよね。
「まぁ、こんな道のど真ん中のオープンカフェで撮影なんて目立ち過ぎるよな。初めてなんだから緊張して当たり前だし…笑えないよな」
「はぁ」
確かに。
時間が経つにつれて野次馬って言うのかギャラリーが増えてくる。
特に女の子!
彼にはキラキラした憧れの目を向けてるけど、その目が私に向けられると…
それこそナイフでも突きつけられてるような冷たい目!
目で人が殺せるなら私はもうとっくにあの世にいってるわね。
そんな状態で私が笑えますか!
例え機嫌がいい時でもこの環境じゃ笑いも何処かへ逃げていくわ。
いや、私も逃げ出したいもん。