Fake Love
「楓ちゃん大丈夫か?」
椅子から動けない私を覗き込み
「カナ君…あら山科さん、どうしたの?」
「たぶん…緊張しすぎたんじゃないかな?」
「そうよね。撮影なんて初めての経験だろうしギャラリーも…ね。さ、水でも飲んで落ち着いて」
メイクの緒方さんにコップを握らされて
「すみません」
一気に飲み干す。
「ありがとうございました」
コップをテーブルに戻し
「あの」
「ん?」
心配そうに見ていた彼に
「別の場所で撮影って」
「あれ、聞いてなかった?」
「そろそろ行きましょう」
スタッフさんが呼びに来て答えをもらう前に車に乗せられた。