令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
内心はドキドキだが、敢えてさり気なさを装い言ってみた。さて、吉田栞はどう返事するだろうか。

などと考える暇もなく、


「あ、はい。ちょっと待ってください」


という返事がすぐに返ってきた。あまりの呆気なさに唖然としてたら、


「ちょっと、栞……」


すかさず近藤絵理が止めようとした。こいつ、余計な事を……

ところが、吉田栞は近藤絵理が止めるのを無視するかのように、すくっと立ち上がってカバンに手を入れ、中からピンクの携帯を取り出した。


そして「えっと……」とか言いながら、おぼつかない手付きで携帯をいじり始めた。

俺は手っ取り早く、


「赤外線で交換しよう?」と言ったのだが、

「あ、はい。えっと……」


吉田栞は更に慌てだした。どうやら赤外線のやり方を知らないらしい。普段、あまり携帯を使っていないのかもしれない。


そんな吉田栞の仕種を見てたら、なぜだか俺はいじらしいような、微笑ましいような気持ちになり、つい「ふっ」と笑ってしまった。

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