令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
そして、

「ねえ、今夜来てくれる?」


と小声で聞いてきた。

通常、杏里さんは夜のピークを過ぎる頃に上がって帰って行く。そして今日みたいに密かに誘われると、俺は帰りに杏里さんのアパートへ寄る、というパターンだ。


「今日はちょっと……。レポート書かなきゃいけないんで」


俺はそう言って断った。レポートというのは丸っきりの嘘ではないが、提出期限はまだ先だから、本当は今夜書く必要ない。というか、今夜書く気はなかった。


断った本当の理由は、そろそろ杏里さんとの関係を絶ちたいと思っているからだ。

杏里さんとは話が合うし、体の関係を持ってる俺だが、正直、俺はあまり杏里さんの事は好きじゃない。人として。

他人の事をとやかく言える俺ではないが、杏里さんはあまり性格が良くないと思う。


それと、杏里さんとの関係を絶ちたいのには、もうひとつ理由がある。

< 133 / 548 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop