令嬢と不良 ～天然お嬢様の危険な恋～
「お疲れ様でした」

「おお、お疲れ……」


店の後片付けが終わり、店長に挨拶して外に出ると、途端に冷たい北風が身に凍みた。俺は、冬の寒さが大嫌いだ。

去年７回忌だったから８年前、いや７年前か。あの日、おやじさんの葬式の日も、こんな北風が吹く寒い日だったな。


俺は重い体を引きずるようにして杏里さんのアパートへ向かった。今夜はいつも以上に疲れた気がする。あまり客は多くなく、大して忙しくなかったのに、なぜだろう。


いつもと違う事をしたっけかな。と考えて、吉田栞に会った事を思い出した。短い時間だったが、俺は案外緊張してたのかもしれないな。

そう言えば“メールしてもいいか？”なんて吉田栞に言っておきながら、まだしてなかった。後でするかな。しかし何て書けばいいんだろうか。


そんな事を考えながら歩いていたら、杏里さんのアパートに着いていた。

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