令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
「お疲れ様。外は寒かったでしょ?」

「はい、そうですね」


俺が玄関に入り、ドアを閉めるやいなや、杏里さんは俺の首に腕を回して抱き着いてきた。


「可哀相に、耳が冷たくなってるわね」

「そうですか?」

「何だかハル君、元気がないわね?」

「なんか、疲れちゃって……」

「そうなんだ。じゃあ、あたしが元気にしてあげる」


とか言って、杏里さんは熱い唇を俺の口に押し当ててきた。話すだけと言ってたはずだが、のっけからこれじゃ、そんな雰囲気ではないな。予想通りではあるが。


俺は靴を脱いで部屋に上がり、コートを脱いで二人掛けのソファにドカッと腰を降ろした。


「今、温かいコーヒーを淹れるから待ってて?」

「すみません」

「あたしが帰った後、忙しくなかった?」


台所で向こう向きに立った杏里さんが言った。


「そうでもないです。今夜はあまりお客さんが来なかったから」

「そう? ならいいけど、これから忙しい時間帯なのに、さっさとあたしを帰すなんてバカなんじゃない? あのハゲ」

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