令嬢と不良 ～天然お嬢様の危険な恋～

「お、お兄ちゃん……？」


由紀ちゃんは悠馬さんの腕に手を添えたけど、悠馬さんはそれに構わず、険しい目で私を見下ろしている。


「あんた、俺の事を貧乏だと思ってんだろ？」

「そ、そんな事はありません」

「いいや、そうだね。貧乏人に奢られるのは、プライドが許さなねえってか？」

「そんな……」

「お兄ちゃん、やめてよ……」


由紀ちゃんが泣きそうな声を出した。そういう私も、泣きそうなんだけど。


悠馬さんは「チッ」と舌打ちをして店員さんに向かい、３人分のお会計をした。私はそれを、茫然と見ていた。


せっかく楽しくお食事したのに、すっかり雰囲気が悪くなってしまった。私のせいで。私が悠馬さんを、怒らせてしまったから……


「ご馳走さまでした……」


歩き出した悠馬さんの背中に向かい、私は鼻水をすすりながらお礼を言ったのだけど、悠馬さんはお返事をしてくれなかった。


「お兄ちゃん！」