令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
電車の中は、酒臭いオヤジやバカ騒ぎする若い奴らでかなり混んでいた。

俺にはいつもの事で慣れてるが、栞はそうでもないようで、困ったような顔をしている。


「きゃっ」


電車が揺れたはずみで栞はよろけ、俺は咄嗟に栞の腕を持って支えてやった。そして、


「俺に掴まるといいよ」


と言うと、栞は素直に「はい」と言い、遠慮がちにではあるが、俺の腕に小さい手で掴まった。


それにしても近い。
向き合って立つ俺と栞には、殆ど隙間というものがない。

混んでるから仕方ないわけで、栞は頬を赤くして恥ずかしそうだが、イヤそうではない。もちろん、俺もイヤじゃない。


あ、そうだ。電車と言えば、俺は栞に聞きたい事があったんだよな。


「あんた……、じゃなかった栞は、本当に電車で通ってるんだな?」

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