令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
栞がウブでかえって好都合じゃねえか。ウブな孫娘が男にメロメロになり、終いにボロ布みたいに捨てられたら、吉田泰造のショックはさぞや大きい事だろう。

ふっ。ざまあみろ!


「あの、こっちなんですけど……」


おっと、またやっちまったらしい。


「面倒だから、こうするか……」


俺はそう言って、俺の袖を掴む栞の手をギュッと握った。

栞はハッとして俺の顔を見たが、俺が「嫌か?」と聞いたら、頬を染めながら「いいえ」と答えた。

栞の手は、子どもの手みたいに小さく華奢で、少し冷たかった。


「おまえの手、冷たいな?」

「あ、ごめんなさい!」

「いいって」


栞は手を引っ込めようとしたが、俺はその手をギュッと握った。


こうして俺と栞は手を繋いで歩き始めた。栞はこういうのも初めてかもな。手を握るだけだが、ウブな栞にはきっと刺激的で、俺的には効果的だろう。


そう言う俺も、女と手を繋いで歩くなんていつ以来か思い出せない程だし、かなり恥ずかしいけどな。

< 217 / 548 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop